常夏の島、プーケットは世界でも有数のダイビング名所だ。私の学校では年に数回
インストラクター同行のダイビングツアーがあったりもして、私の友達にも何人か
潜れる子がいた。彼らがツアーに行くたびに撮ってきて見せてくれる写真には、
日本にいた頃よくブラウン管を通して見た深く青い海の中が広がっている。あの頃は
世界のどこかにそんな美しいところがあるなんて、信じられなかった。こんなに汚れて、
人の欲とうわべだけの親切に満たされてしまった世界からは想像もつかない、と思って
いた。その頃の私はまだ、自分が一歩踏み出したところにその世界があることさえ知ら
なかったのだ。

彼と話すと、マリンスポーツの話が頻出する。スポーツ全般が苦手な私を、どうにか
一緒に引っ張っていこうとどんなに楽しいか熱弁してくれるのだが、私はあまり気乗りが
しない。見てるだけでいいよ、という私に彼は奥の手を出してきた。オンラインで話して
いるときに1枚の写真を送ってきてくれたのだ。その名も「Mr.　Turtle」。
「亀・・・？」
「そう、Mr. Turtle」
飄々と言う彼。よくわからないまま転送を終えた写真を開くと、そこには大きなウミガメに
餌をやっている彼の姿があった。・・・ウミガメ。日本ではまだお目にかかれるのだろうか？
保護活動が進んでいるのくらいは知っていただけに、こんなにも身近な人とウミガメのツーショットを見せられて驚かずにはいられなかった。
「ダイビングは？綺麗だよ、水の底って」
悪くないかもしれない。まだ信じられないこの美しさを肌で実感して、世界のどこかに
まっさらに穢れない世界が存在することを、愛してやまない人の隣で確かめるのも。

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